私は新卒で大手メーカーに入社し、経理部門で5年間働いてきました。
そのうち最初の3年半は工場併設の事務所に勤務し、いわゆる工場経理としての仕事を行ってきました。
工場経理では、担当する事業や製品に関する経理関連の業務全般をこなすことになりますが、今回はその中でも特にメーカーにとって重要性の高い業務を取り上げて記載します。
原価計算
原価とは製品を作るのにかかった費用のことで、これを計算するのが原価計算です。
例えば、製品Aが100円で売れたとして、この製品Aの原価が80円であれば残りの20円が手元に残る利益になります。
この80円を算出するのが原価計算ですが、前提として製品Aの原価を100%正確に計算することはできません。
なぜなら多くの企業ではAという製品のみを扱っているわけではなく、BやCなど複数種類の製品も製造・販売しています。
AもBもCも同じ工場で生産していると、工場の電気代など共通でかかっている費用はみなし計算で配賦するしかありません。
また、うまく効率的に生産できた場合と、何度かミスや修復を経て生産した場合では同じ製品Aであってもかかった手間に差があります。
このように、個別の製品にいくらの費用がかかっているのかを100%正確に計算することは不可能なので、原価計算においてはある程度正確だけどざっくりと計算するというやり方が採用されます。
計算の正確性は、公認会計士がOKを出すレベルを満たしていることが必要です。
ちなみに私の会社では標準原価計算と呼ばれる方法が採用されていました。
棚卸調査
年度末になると、製品や仕掛品がどれだけ在庫に残っているのかを正確に計算します。
私が担当していた事業では年度末だけでなく毎月末行っていました。
在庫の残高は生産システムを調べるとすぐに分かるのですが、棚卸調査では実際に工場へ行って在庫を数え、生産システムの数字が正しいかどうかをチェックします。
生産システムで数字が分かるのだからわざわざ数える必要は無いように思えるかもしれませんが、大抵の場合、生産システム内の数字と実際の在庫残高にはズレがあります。
生産システムのエラーや入力ミスなどズレる要因は様々ですが、このズレ要因を調査し対策するというのも工場経理の仕事の1つです。
設備投資の採算性計算
メーカーにとって、設備投資を上手にできるかどうかはその後の事業成長を左右する重要な要素となります。
設備そのものの購入費用だけでなく、設置するための費用、稼働させるための人件費など莫大な資金が必要となります。
ここで、設備投資をすることで会社が儲かるのかどうかをきちんと見極めるのも工場経理の仕事です。
例えば1億円の設備投資を行う際には1億円以上の利益を得ることができるのか、という観点でチェックします。
もし1億円の設備投資額を回収するのに10年もかかる計画であれば、その10年の間に事業環境が変化してしまうため確実なプランであるとは言えません。
未来の話なので確実なことは誰にも分かりませんが、計画がある程度確実であるかどうかを判断する必要がある難しい仕事になります。
最終的に投資を実行するかどうかの判断は経営層に一任されますが、その前段階のチェックをきちんとやっておかないと工場経理の責任も問われてしまいます。
他にも工場経理は汎用的なスキルが身に着く
上記であげた点以外にも、財務諸表の作成や税務申告など一般的な経理業務も行うので、総じて工場経理は経理パーソンとしての汎用スキルが身に着くと言えます。
経理というとスーツを着てオフィスに勤務する姿を想像するかもしれませんが、スキルを身に着けるという点で工場経理は非常におすすめできる部署です。
コメント